「別料金なく本番」デリヘル嬢に入れ込んだ元高校教師の“痛すぎる勘違い”
産経新聞 1月16日(木)20時45分配信
「特別扱いのような言動も、いわゆる『リップサービス』で被害者に落ち度はない」
無店舗型風俗店のデリバリーヘルス(デリヘル)で働く女性に、「風俗店勤務していたことを元夫にばらす」「元夫に裸の写真を見せる」などと脅したとして、
脅迫罪に問われた兵庫県たつの市、元県立高校教師の男(67)の判決公判で、神戸地裁は昨年11月22日、男の“勘違い”をこう断罪した。
女性へのプレゼントに100万円をつぎ込み、店を通さずに会えることを得意げに感じていた男。
結局は女性にふられてしまい、逆恨みして「リベンジ(復讐)ポルノ」に及ぼうとした。
かつては教壇に立ち英語を教えていた男は、法廷で被告人として、勘違いからストーカー行為に至ったいきさつを赤裸々に打ち明けた。
■「別料金なく本番」を自慢
検察側の冒頭陳述などによると、男は平成24年11月、妻に先立たれた。
その寂しさを埋めるため、風俗店を利用するようになり、翌12月に被害者の女性と出会ったという。
「顔の好みがタイプだった」ことから、女性を何度も指名。
そのうちに、デリヘルを介さずに逢瀬を重ねるようになった。
このときの様子を、男は法廷で「別料金なく、本番(セックス)をさせてくれた」と語った。
女性を脅迫する際に使った裸の写真を撮影したときのことを
「恋愛感情はなかったが『会えないときに見たい』と伝えたら、すんなりとOKをもらった」と少し自慢げに供述した。
また、女性から「主人と別れ、家計が苦しい」と打ち明けられると、100万円分の金品をプレゼントし、
デリヘルを辞めて別の仕事に就いたと聞いたときには、お祝いとして20万円を渡したことも明らかにした。
■裏切られてストーカーに
しかし、こうした特別扱いも長くは続かなかった。昨年7月に、女性からメールでこう打ち明けられたからだ。
「特別扱いは全部うそで、関係を清算したい。本当は抱かれたくなく、キスは苦痛だった」
男はこのメールを読んで激怒。
「けじめとして20万円を返せ。だましたことを謝れ」と返信したが、女性からの連絡はなかった。
不満を募らせた男は同8月8日、「ひどい扱いを受けてきた僕の苦しみを、少しでも味わってもらう。裸の写真をだんなさんに送る」
「知人かだんなさんに(風俗店勤務を)話そうと思っている」などとリベンジポルノを仕掛けるようなメールを送信。
さらに「同じ内容のビラを、近隣住民の家のポストに入れる」と書いた脅迫文を8回にわたって、送付した。
男はこの間、兵庫県警からストーカー行為に当たるなどと注意を受けていたという。
それにもかかわらず、脅迫文を送り続けたことから、県警三木署は9月13日、ストーカー規制法違反容疑で男を逮捕。
神戸地検は10月11日、手紙などで女性の名誉に危害を加えることを知らせたとして、より刑の重い脅迫罪で起訴した。
■「客と店員の関係に期待しすぎた」
11月15日に神戸地裁で行われた被告人質問。裁判官は男に、2人の関係を冷静に判断できなかったことを厳しく問い詰めた。
裁判官「客と店員の関係に期待しすぎた。許されることではない」
男「はい」
裁判官「未練を断ち切るために冷静に気持ちを整理してください」
男「わかっています」
裁判官「恨みを抱いて、脅迫するような文章を送ること自体が犯罪になる。反省して、今後ないように」
男「女性のやつれた表情を見て、本当に申し訳ないと思った。2度としない」
こうしたやりとりの後、検察側は論告で「逆恨みによる自己中心的な犯行」として懲役2年を求刑。
神戸地裁は11月22日、「名誉を著しく害する行為を予告するなど悪質だが、反省している」と量刑理由を述べる一方で、
「思いを再燃させて同様の行為に及ぶことを防ぐ」として、懲役1年6月、保護観察付きの執行猶予3年を言い渡した。
■なぜ起きる勘違い
こうした“勘違い”に端を発した犯罪行為はなぜ起きるのか。
兵庫県芦屋市の市立青少年愛護センターの所長(当時)の男が20年2月、ストーカー規制法違反容疑で逮捕された。
また、同年9月、宮城県警が、仙台中央県税事務所の主査(同)の男を同容疑で逮捕した。
いずれも風俗店で働く女性に繰り返し電話をかけたとされる。
主査は「連絡がもらいたかった」と供述していたという。
客と風俗店員。お金でつながっているだけの関係にもかかわらず、なぜのめり込んでしまったのか。
「図解雑学 人間関係の心理学」や「図解雑学 恋愛心理学」などの著書がある立正大の斉藤勇教授(恋愛心理学)は、
こういった男性の心理について「自分だけは違う」という願望で「自分は特別」と思い込んでいる上、女性からの優しい言葉を信じ切ってしまうと説明。
「こうなると理性では止められず、冷静な考えが成立しなくなってしまう」と分析する。
「思い込みが強すぎるほど裏切られたときの反動からストーカーに発展しやすい」ともいい、
「女性と話す機会が少ない男性の場合、別れ話になったら『他の相手に』となりにくく、つきまとってしまう傾向がある」と説明している。
(おわり)
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